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第96話

「なんで・・・そう、思うのさ?」

「んー、先の事がなんで分かるのかって聞いた事に対して怒ったんでしょ?」

「多分・・・」

 そんな気がするだけなんだけれど。

「聞いたってのはアンタがファーストの事を気付いてないって事になるわけで。」

「そうかなぁ?」

「少なくともファーストはそう思ったんじゃない?」

 いや、それは飛躍しすぎな気がするんだけど。

 アスカはかまわず話を続ける。

「でも、アンタに『前』の記憶が無いと思ってるんだったらそれで怒るのも変よね?」

「だから、僕の事に気付いてるって?」

 確かに思い当たる節はあるんだけどさ。

 最近は僕が『前』と違う事をしてもそれほど気にしてないみたいだったし。

 以前はちょっとした事でも意外そうな顔をしてたのにね。

 意外に思うのは『前』の僕を知ってるからで。

 僕の事に気付いたからそれを不思議に思わなくなった、と。

 そう考えるとある意味納得してしまう。

 一方で気付かなかった自分は鈍感だと思ったりもするけど。

「でもさ、それなら何で僕に言ってこないのかって・・・」

「言わなくても分かってくれるって思ってたんじゃない?」

 結構ショックな一言だった。

 もしそうなら、僕は・・・

 でも。

「・・・あの人と、父さんといるわけは?」

「アタシにそんな事聞かれたって分かるわけないじゃない。」

 そう言って肩をすくめる。

「もっとも、アンタにはきついかもしれないけど、アイツが純粋に司令に協力してるって可能性は考えといた方がいいかもね。」

「そう、だよね・・・」

 落ち込んだ僕を見かねたのか、軽い口調でこう付け加えてくれた。

「ま、全部思い付きで言ってる事だし、あんまり真剣に受け取られても困るんだけど・・・」

 けど、そう考えた方が筋が通っちゃうんだよね。



 結局、午後の授業はサボってしまった。

 なんか居心地が悪かったっていうのもあるけど。

 それよりも、ゆっくりと考えたくて。

 はっきりいって何がなんだか分からなくなってきてる。

 いや、綾波が僕達と同じで以前の記憶を持ってるんだろうって言うのはほぼ確信してるんだけど。

 多分僕の事も気付いてるんじゃないかって思い始めてるけど。

 結局のところ、綾波は何を思ってるんだろう?

 何がしたいんだろう?

 僕の事を気にかけてくれてる一方で、父さんのやる事に従って。

 このまま最後まで父さんの味方なのか?

 今の綾波が僕達と『同じ』だとしたらサードインパクトの事を知ってるはずで。

 いや、知ってるどころかあれは綾波が鍵だったんじゃないかって気がする訳で。

 それだけの事ができる綾波が父さんのために動いてるんだとしたら。

 ・・・待てよ?

 あの時の綾波は僕の望みを聞いてくれたんだよな。

 結果は確かにアレだったけど。

 綾波の責任だとは思わないし。

 そういう意味では僕の方を向いてくれてたのか?

 だとすると今の状況はなんなんだろうって疑問が浮かぶけど。

 ・・・結局、悩んでるだけじゃ何も始まらないんだよな。

 考えてみれば、まともに綾波と話し合った事って無かった気がする。

 いろんなことをごまかして。

 都合よく甘えさせてもらってそれで満足してた。

 綾波の事はよくわかんないから、とか勝手に思い込んで。

 綾波が何をやっててもかまわない、なんてただの逃げだったんじゃないだろうか。

 そこを突き詰めると自分にとって嫌な事を見なきゃいけなくなりそうで。

 だから綾波が僕達と『同じ』だって事にも気付けなかったんだろうし。

 やっぱり僕は何も変われてなかったんだな。

 それじゃだめだよな。

 きちんと綾波に向き合ってみよう。

 そして考えよう。

 綾波が何を知っているのか。

 何を思っているのか。

 何がしたいのか。

 その上で、僕が何を望むのかを。

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