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第9話

 買い物がすんで。

 綾波の住んでる部屋に行ったんだけど。

 そこでまた驚かされる羽目になった。

 なぜかといえば、部屋がきれいに片付いてたからで。

 まぁ、家具とかは前とおんなじようにほとんどなくて。

 殺風景といえば殺風景なんだけれど。

 それなりにきちんと整頓されて、掃除もされてるみたいだった。

 ・・・綾波が掃除してるっていうのか?

 やっぱり変だよなぁ。

 どう考えても変だ。

 なんでこんなに綾波が家庭的なんだ・・・

 とか思ってたら、先に部屋に入った綾波が僕のほうをじっと見てた。

「・・・なにをしてるの?」

「え、いや、きれいに片付いてるなぁって思って・・・」

「そう・・・ありがと」

 ってそこでなんで照れたようにほほを染めたりするんだよぉ。

「あ、あの、それじゃあ、おじゃまするね・・・」

「・・・どうぞ。」

 で、買ってきたものを適当な所においたんだけど。

 何もすることがないんだよな、よく考えたら。

 綾波はかばんから本を引っ張り出して読みふけってるし。

 仕方ない、S‐DATでも聞くか。



 しばらくそうやって過ごして。

 思ってたより居心地が悪くないことに気付いた。

 お互いなんにも口をきかずに、自分の事をしてるんだけど。

 なんだか奇妙に落ち着くというか。

 不思議だな。

 「綾波」と一緒にいた時のような感覚。

 そしてそれに思い当たるたびにかなしくなる。

 違うって事にこだわってる僕がいけないんだろうか。

 綾波を綾波だって認めてしまえば。

 そうすれば楽になれるのかもしれない。



 そんなことを考えてたら、綾波がいきなり立ち上がった。

「綾波?」

「・・・ご飯の支度。」

 そう言ってすたすたと台所に歩いていく。

「あ、手伝うよ。」

「いいわ、一人でできるから。」

 かといって、綾波に料理してもらって僕はここでボーっとしてるってのも落ちつかないし。

「泊めてもらうんだし、それくらいはさせてよ。」

「・・・なら、そうすれば。」

 そっけない口調。

 でも、照れてるんだろうな、これは。

 なんとなく分かってしまう。

 なんか・・・かわいいな。

 ・・・じゃなくてっ。

 ちゃんと料理をしよう。



 で、実際に料理をいっしょにしてみて。

 ・・・あぶなっかしい。

 包丁の使い方とかもぎこちないし。

 さすがに気になったので聞いてみた。

「綾波、いつから料理するようになったの?」

「・・・3日前」

「え?」

「やっとギブスが取れたから。」

 あぁ、起動実験の失敗で・・・

 って、あれ?

 じゃあそれまではどうしてたんだ?

 それに、手順自体は知ってるみたいだし。

 そのことも聞いてみたら。

「勉強したもの。」

 というお返事だった。

 やっぱり綾波のことは良くわからないかもしれない・・・



 食事をすませて。

 その後はさっきと同じようにだらだらとしてたんだけど。

 ・・・さすがに眠くなってきたなぁ。

 とはいっても。

 よく考えたら寝る場所ないよな。

「ねぇ、綾波。」

「・・・なに?」

 目だけこっちに向けて綾波が答える。

「布団か何かないかな?」

「どうして?」

「いや、眠くなってきたから・・・」

「ベッドがあるわ。」

 さも当然のように言う綾波。

「それじゃ、綾波が困るだろ?」

「かまわないわ・・・」

 でも、僕は泊めてもらう立場なんだし。

 綾波を床で寝かせるわけにいかないよって言おうとしたら。

「一緒に寝れば良いもの。」

 とんでもないことを言い出した。

「って、そんなわけにはいかないだろ?」

 泊めてもらうだけでもまずいっていえばまずいのに・・・

「問題ないわ。」

 綾波はそういうこと気にしないのかもしれないけどさ。

 僕としては気になるわけで。

 結局は僕が床で寝るって事で落ちついたんだけど。

 それを納得してもらうのにずいぶんかかってしまった。



 その後は特に何もなく。

 綾波ももう寝てしまって。

 でも僕は寝付けずにいるんだよな。

 さすがにすぐそばで綾波が寝てるって思うとねぇ。

 別にどうこうしようとか、そういうんじゃないんだけれど。

 それでもね。

 だったらなんでのこのこついてきたんだって感じだけれど。

 あの時はそれでいいやって思っちゃったんだよな。

「ふぅ・・・」

 軽くため息をついて体を起こす。

 ベッドの上で穏やかに寝ている綾波。

 そういえば綾波の寝顔見るのって初めてかもしれない。

 なんか・・・無邪気な寝顔だなぁ。

 こんな娘にさ。

 どれだけのことをさせたら気が済むっていうんだろうな、父さんは。

 そんなことを考えて。

 この綾波を守ってあげたいって。

 少しだけ思った。

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