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第85話

 なんというか。

 普段は綾波と行動して。

 綾波が居ないときはアスカと行動する。

 っていうのが普通になりつつある。

 もはや周りの視線とかに関しては諦めかけてるからいいんだけどさ。

 もう少し自分一人の時間が欲しいような、っていうのは贅沢なんだろうな。

 やっぱりアスカのそばにいたいって人間は多いらしく。

 アスカと居る時は相変わらず殺気のこもった視線を向けられるし。

 というよりアスカってそれを承知の上で僕を虫除けにしてる気もするんだよな。

 もっとも、アスカがいる限りは誰も実力行使はしてこないんだけど。

 だからまぁ、プレッシャーさえ無視できればそれはそれでって気もする。

 アスカといるのが楽しいのは事実だから。

 いや、楽しいっていうのとはちょっと違うな。

 変に気を張る必要がないから楽なのか。

 いまさらカッコつけてもしょうがない相手だし。

 かなり好き勝手な事を言い合える。

 それは綾波といるのとはまた違った居心地の良さで。

 むしろトウジ達といるときみたいな感じだよな。

 やっぱアスカを女の子扱いしてないよなぁというか。

 アスカの方でも似たような物なんだろうけどさ。



 それでも、まぁ一人になれる時間というのはある物で。

 ふらふらと本屋とかを歩き回っていたんだけれど。

「よう、シンジ君じゃないか。」

「あ、加持さん・・・ってなんかすごい荷物ですね。」

 久しぶりに会った加持さんは大きな袋を両腕に抱えていた。

「ちょっと肥料とかが切れてしまってね、で、そのついでにいろいろ買い込んでしまったって訳さ。」

「肥料って何に・・・」

 そういえば、このころ加持さんはスイカ作ってたんだっけか。

 なんかアルバイトがばれたんで暇になったとか言ってたような。

 使徒が暴れてる側で水撒いてるっていうのも結構あれだよな、今思うと。

「ちょっとした畑を作ってね、いろいろ育ててるんだ。」

「そうなんですか。」

 いや、ちょっと待てよ。

 あの後、加持さんはどうなった?

 一ヶ月初号機の中にいたとはいえ、あれから一度も会ってないよな、僕は。

 それで・・・

 まるで遺言みたいな留守番電話。

 それを聞いて泣き崩れてたミサトさん。

 加持さんは・・・死んだ、んだよな、多分。

 なんで忘れてたんだ、僕は?

 けど、思い出したからって何が出来るだろう。

 加持さんが何故死んだかも分からない。

 いや、いったい加持さんって本当は何をやってる人なのか。

 『アルバイト』って何だったのか。

 何も知らないっていうのに。

 っていっても本人に聞くわけにもいかないし。

 ほかに知ってそうなのは・・・ミサトさんくらいか。

 ちょっとどうしようもないなぁ。

「どうしたんだ、シンジ君?」

「いえ、別に・・・それより畑ってどこに作ったんですか?」

「あぁ、それは・・・」

 ってしばらく畑やスイカの話をして。

 それでその場は別れたんだけど。

 加持さんの事も考えないとなぁ。

 いろいろお世話になってるし。

 できるものなら死んで欲しくない。

 けど、こういう時はやっぱ自分の能力不足っていうか限界を感じるよなぁ。

 中途半端な知識だけじゃ何もできない。

 っていうかこれまで何もしようとしてこなかったツケが廻ってるって気もするけど。

 この期に及んでどうなるものでもないし。

 できる範囲で何とかしてくしかない、か。

 とりあえずはアスカと相談だな。

 何でもアスカに頼ってるみたいでみっともないけど。

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