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第8話

「・・・じゃ、行きましょ。」

 っていっても。

 いや、思わずうなずいちゃったんだけどさ。

 よく考えたら綾波のとこに行くってさすがにまずいよなぁ・・・

 とか思って考え込んでしまったたら。

「・・・・・・」

 綾波はただじっと僕のことを見つめてるわけで。

 結局その無言の圧迫に耐えかねて、綾波について行くことを決めてしまった。

 にしても・・・どういうつもりで綾波はこんなことを言ったんだろう?

 僕のことを心配して、なんておよそありそうじゃないし。

 だいたい、綾波が僕と話すようになったのって前はヤシマ作戦の後からだった気がするんだけど・・・

 この頃はあくまで「父さんの息子でサードチルドレン」くらいの認識しかされてなかったはずなんだよな。

 だから必要最小限のことしか口を開かなくて。

 それと比べたら今の状況はずいぶんおかしいよな。

 綾波のほうから話しかけてくるだけでも十分過ぎるくらいなのに。

 家に泊めてくれるって。

 違いすぎるじゃないか、全然。

 そういえば第四使徒が現れた時も変だったな。

 あの時も僕のことを待っててくれて。

 何が変わったって言うんだ?

 僕は今の綾波に対しては何もしてない。

 っていうか何をする暇もない。

 だとしたら、なんで綾波の態度がここまで違うんだろう。

 ・・・いや。

 考えたって仕方ない。

 どうせ、なるようになるんだろうから。



 って一度はそう結論を出したんだけど。

「ここ、寄っていくから。」

 って綾波がスーパーの前で言って。

「・・・なんで?」

 思わず間の抜けた返事をしてしまった。

 だって、綾波とスーパーなんて接点が感じられないっていうか。

 綾波がスーパーで買い物をしてる姿なんて想像もできなかったから。

 だから、綾波がこう言った時はひどく驚いた。

「・・・夕食の材料。」

「夕食?」

 材料って料理するってこと?

 ・・・誰が?

 まさか。

「綾波が料理するの?」

 コクンって。

 信じられない。

 でも。

 迷うことなく野菜とかをかごに入れてる綾波を見てると。

 それも嘘じゃないのかもって思えて。

 それが、なぜか以前の雑巾を絞ってる綾波とダブって。

「綾波ってお母さんみたいだ・・・」

 そう、つぶやいてた。

 そしたら。

「・・・何を言うのよ。」

 って少し照れたみたいに。

 そう、言うんだ。

 前と同じように。

 だから僕は泣きたくなった。

 ここに綾波が居るって事がつらすぎて。



 結局はこんなところで泣くわけにいかないからってなんとか押さえたんだけれど。

 綾波は綾波なんだろうか。

 たとえ、僕の事を知らないんだとしても。

 たとえ、僕の知ってる綾波じゃないんだとしても。

 ・・・綾波が自爆したあと。

 3人目の綾波と会って。

 僕は3人目の綾波を同じ人間とは思えなかった。

 ひどく無機質な、人形めいた感じがして。

 その頃には綾波から感じるようになってた温かみが全て抜け落ちてたから。

 それは僕のことをおぼえていないせいかと思って。

 だから、僕のことを知らないこの世界のみんなは全くの別人なんだって思ってた。

 だったら今の綾波はなんなんだろう。

 僕に関する記憶なんて持ってなくても、それでも前と同じようなしぐさを見せる。

 なら僕を知ってるかどうかなんてたいした事じゃないんだろうか。

 その人であるって事実には変わりがなくて。

 ・・・僕はどうすればいいんだろう。

 みんなとどうやって接していけばいいんだろう。

 僕には分からないんだ。

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