第77話
結局のところ。
僕が入院してたのは5日だったんだけど。
ずいぶん長かったよな、とは思う。
実際、初めて初号機に乗って暴走したときはその日のうちに解放されたわけだし。
もっとも、リツコさんの話だと今回はシンクロ率が400近くまで跳ね上がったらしく。
精神汚染とかを念入りに調べる必要があったらしい。
確かに、暴走の後遺症とかで街中でいきなり暴れ出すようなはめにはなりたくないし。
変なところがあるなら早めに分かってた方がいいんでとくに文句は言わなかった。
まぁ、あればあったで困るんだけど。
さいわいなことに診断結果にはなんの問題もなかったらしい。
で、翌日には退院ってとこにミサトさんが訪ねてきた。
「ごめんねぇ、きちんとお見舞い来れなくて。」
「いいですよ、ミサトさんも忙しかったんでしょうし。」
しかし、ミサトさんと話をするのもかなり久しぶりな気がするな。
一緒に住んでないから会う機会自体が減ってたし。
訓練のときとかに顔は合わせてたんだけど、それだけで。
こちらから話し掛ける気にはならなかったんだよね。
やっぱり、前のミサトさんとだぶったりっていうのがあったわけで。
それで少し距離を置くようにしてたかったから。
だから、こうして来てくれるっていうのも少し意外ではあった。
とはいえ、とくに話題があるわけもなく、それなりにあたりさわりのない世間話をしてただけなんだけど。
アスカを名前で呼んでた件でけっこうからかわれちゃったんだよね。
今までは、アスカも僕の事は「サード」って呼んでたわけで。
何があったんだろうって思われるのも仕方ないのかもしれないし。
少しは気にした方がいいんだろうかと思ったけど。
よく考えたら、いまさらだよな。
で、その翌日。
僕が荷物をまとてるところにアスカがやってきて。
「なんか手伝う事・・・ってなさそうね。」
「たいした物はないし、すぐ終るから。にしても退院の日にお見舞いに来るかな?」
そう言うとちょっと顔をしかめた。
「こっちもリツコに捕まってたのよ。さすがに疲れたわ。」
「あぁ、アレの事?」
ATフィールドをあんなふうに使ったんだから気にはなるだろうけど。
僕の精密検査してる一方でアスカの話も聞いてたのか。
さすがというか。
「そういうこと。それにファーストと顔合わせるのもね。」
「?」
戸惑った僕の顔を見てアスカがため息を吐いた。
「あのねぇ・・・いい?アタシがアンタに近づくとファーストの機嫌が悪化すんのはわかるでしょ。」
「・・・あ。」
いや、確かにそれはそうかもしれないけど。
前にアスカに泊めてもらった時はいろいろあったし。
「わざわざ針のムシロに座る趣味なんてないわよ。」
「でも・・・お見舞いくらいで?」
「アンタも幸せよね。」
もう一度ため息を吐きながらそんな事を言う。
「なんだよ、それ。」
「気にしなくていいわよ、わかんないんなら。」
むちゃくちゃ気になるんだけどさ。
まぁ、聞いても話してはくれなさそうだったので。
「じゃあ今日は何で来てくれたのさ?」
話を変える事にした。
「アイツは一日中訓練でしょ?」
「まぁね。」
そうじゃなかったら手伝いに来てくれたんだろうけど。
「いろいろ情報交換とかしようと思ってね。」
「そうだね。」
確かにアスカとは話がしたかった。
今までの事とこれからの事。
一人で考えても全然答えが出なかったし。
近くの公園のベンチに並んで腰掛ける。
「で、アンタに聞きたい事はたくさんあるんだけど。一番聞きたいのは・・・」
そこでいったん言葉を切る。
「アタシがやられた後に何があったかって事よ。」
やっぱりそうくるよな。
「気が付いたらアンタに首しめられてるし。」
そんな事を言いながらも口調はけっこう軽かった。
「あれは・・・悪かったと思ってる。」
「まぁ、いまさらねちねち言う気もないけど。何であんなことしたわけ?」
「自分でもよく分からないんだ。」
「あのねぇ。」
ちょっと顔をしかめる。
「けどさ、正直あのあたりの事なんて思い出したくなかったしさ。」
「まぁ、それはそうだけど」
「でも、僕とアスカしかいなかった事がたまらなく嫌だったのかもしれないな。」
「・・・シンジ?」
「『あの時』、アレは多分サードインパクトなんだろうけど、アレって言うのはさ、みんなが溶け合って誤解もすれ違いも、心の痛みもなくなるような世界を作るための物だったみたいなんだよね。」
「・・・・・・なにそれ。」
馬鹿らしいってアスカの口調が言ってた。
「それはそれで幸せな世界になるのかもしれないけどね。」
「だからって・・・」
言いかけたアスカをさえぎるように。
「僕はそんなのは嫌だったから。みんな一つになって、自分と他人との区別がなくなるようなのはごめんだった。」
地面に視線を落す。
「だから元どおりの世界になるように望んだのにさ?あんな所にアスカと二人で置き去りにされて・・・で、何もかも嫌になってたんだろうって思うよ。」
「何、他人事みたいに言ってるのよ。」
アスカがジト目で突っ込みを入れてきたけどそれは無視する。
「別にさ、アスカをどうこうしたかったわけじゃない。壊したかったのは『あの世界』そのものだよ。」
「ま、それは同感ね。」
そう言ってちょっと遠い目になる。
「アタシもあんなとこに居たくないって思ったし、それは今でも変わってないもんね。」
で、僕の方に視線を向けて。
「アンタもそうでしょ?」
「まぁ、ね。」
この世界に来たばかりのときは投げ出し気味になってたけど。
今では違うから。
僕が入院してたのは5日だったんだけど。
ずいぶん長かったよな、とは思う。
実際、初めて初号機に乗って暴走したときはその日のうちに解放されたわけだし。
もっとも、リツコさんの話だと今回はシンクロ率が400近くまで跳ね上がったらしく。
精神汚染とかを念入りに調べる必要があったらしい。
確かに、暴走の後遺症とかで街中でいきなり暴れ出すようなはめにはなりたくないし。
変なところがあるなら早めに分かってた方がいいんでとくに文句は言わなかった。
まぁ、あればあったで困るんだけど。
さいわいなことに診断結果にはなんの問題もなかったらしい。
で、翌日には退院ってとこにミサトさんが訪ねてきた。
「ごめんねぇ、きちんとお見舞い来れなくて。」
「いいですよ、ミサトさんも忙しかったんでしょうし。」
しかし、ミサトさんと話をするのもかなり久しぶりな気がするな。
一緒に住んでないから会う機会自体が減ってたし。
訓練のときとかに顔は合わせてたんだけど、それだけで。
こちらから話し掛ける気にはならなかったんだよね。
やっぱり、前のミサトさんとだぶったりっていうのがあったわけで。
それで少し距離を置くようにしてたかったから。
だから、こうして来てくれるっていうのも少し意外ではあった。
とはいえ、とくに話題があるわけもなく、それなりにあたりさわりのない世間話をしてただけなんだけど。
アスカを名前で呼んでた件でけっこうからかわれちゃったんだよね。
今までは、アスカも僕の事は「サード」って呼んでたわけで。
何があったんだろうって思われるのも仕方ないのかもしれないし。
少しは気にした方がいいんだろうかと思ったけど。
よく考えたら、いまさらだよな。
で、その翌日。
僕が荷物をまとてるところにアスカがやってきて。
「なんか手伝う事・・・ってなさそうね。」
「たいした物はないし、すぐ終るから。にしても退院の日にお見舞いに来るかな?」
そう言うとちょっと顔をしかめた。
「こっちもリツコに捕まってたのよ。さすがに疲れたわ。」
「あぁ、アレの事?」
ATフィールドをあんなふうに使ったんだから気にはなるだろうけど。
僕の精密検査してる一方でアスカの話も聞いてたのか。
さすがというか。
「そういうこと。それにファーストと顔合わせるのもね。」
「?」
戸惑った僕の顔を見てアスカがため息を吐いた。
「あのねぇ・・・いい?アタシがアンタに近づくとファーストの機嫌が悪化すんのはわかるでしょ。」
「・・・あ。」
いや、確かにそれはそうかもしれないけど。
前にアスカに泊めてもらった時はいろいろあったし。
「わざわざ針のムシロに座る趣味なんてないわよ。」
「でも・・・お見舞いくらいで?」
「アンタも幸せよね。」
もう一度ため息を吐きながらそんな事を言う。
「なんだよ、それ。」
「気にしなくていいわよ、わかんないんなら。」
むちゃくちゃ気になるんだけどさ。
まぁ、聞いても話してはくれなさそうだったので。
「じゃあ今日は何で来てくれたのさ?」
話を変える事にした。
「アイツは一日中訓練でしょ?」
「まぁね。」
そうじゃなかったら手伝いに来てくれたんだろうけど。
「いろいろ情報交換とかしようと思ってね。」
「そうだね。」
確かにアスカとは話がしたかった。
今までの事とこれからの事。
一人で考えても全然答えが出なかったし。
近くの公園のベンチに並んで腰掛ける。
「で、アンタに聞きたい事はたくさんあるんだけど。一番聞きたいのは・・・」
そこでいったん言葉を切る。
「アタシがやられた後に何があったかって事よ。」
やっぱりそうくるよな。
「気が付いたらアンタに首しめられてるし。」
そんな事を言いながらも口調はけっこう軽かった。
「あれは・・・悪かったと思ってる。」
「まぁ、いまさらねちねち言う気もないけど。何であんなことしたわけ?」
「自分でもよく分からないんだ。」
「あのねぇ。」
ちょっと顔をしかめる。
「けどさ、正直あのあたりの事なんて思い出したくなかったしさ。」
「まぁ、それはそうだけど」
「でも、僕とアスカしかいなかった事がたまらなく嫌だったのかもしれないな。」
「・・・シンジ?」
「『あの時』、アレは多分サードインパクトなんだろうけど、アレって言うのはさ、みんなが溶け合って誤解もすれ違いも、心の痛みもなくなるような世界を作るための物だったみたいなんだよね。」
「・・・・・・なにそれ。」
馬鹿らしいってアスカの口調が言ってた。
「それはそれで幸せな世界になるのかもしれないけどね。」
「だからって・・・」
言いかけたアスカをさえぎるように。
「僕はそんなのは嫌だったから。みんな一つになって、自分と他人との区別がなくなるようなのはごめんだった。」
地面に視線を落す。
「だから元どおりの世界になるように望んだのにさ?あんな所にアスカと二人で置き去りにされて・・・で、何もかも嫌になってたんだろうって思うよ。」
「何、他人事みたいに言ってるのよ。」
アスカがジト目で突っ込みを入れてきたけどそれは無視する。
「別にさ、アスカをどうこうしたかったわけじゃない。壊したかったのは『あの世界』そのものだよ。」
「ま、それは同感ね。」
そう言ってちょっと遠い目になる。
「アタシもあんなとこに居たくないって思ったし、それは今でも変わってないもんね。」
で、僕の方に視線を向けて。
「アンタもそうでしょ?」
「まぁ、ね。」
この世界に来たばかりのときは投げ出し気味になってたけど。
今では違うから。