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第70話

「ばれてたんだ?」

 自分で言うつもりだったとはいえ。

 結構ショックだな。

 ただ、その割には口調とかが普通っていうか。

 もっと険悪な態度をとられるんじゃないかって思ってたんだけどな。

「確信したのは今だけどね。」

「カマかけたってわけ?」

 なんか笑うしかないな。

 あっさり引っかかった自分に。

「ま、9割がたそうだろうって思ってはいたわよ?」

「いつごろから気づいてたのさ?」

「鈴原がフォースだって話をしたときよ。」

 あの時?

 ばれるようなことを言った覚えはないんだけどな。

「アタシがその話をした理由をアンタが簡単に納得しすぎたのよ。」

「そうかな?」

「鈴原がフォースだってことなんて別にいつ分かったって問題ないでしょ?いずれは顔を合わせることになるんだし。」

「何も起こらないんならわざわざ教えるようなことじゃない・・・なるほどね。」

「そ。アタシにしても鈴原がああいうことになっちゃうって知ってたから、あの時点でアンタに教えたわけだし。」

「つまり、僕がトウジのことを知らなきゃいけない理由にも、アスカがわざわざ教えてくれた理由にも疑問を持たなかったからってこと?」

 まぁ、そういわれればって感じではあるけれど。

「そんなとこね。まぁ、あの時はちょっと疑問に思っただけだけど。」

 そこで肩をすくめて。

「で、いろいろ思い返してみたわけよ。これまでにアンタがやったことについてね。」

「それで不思議に思ったって?」

 無言でうなずかれる。

「それまでは無意識のうちに考えないようにしてたみたいなのよね、アンタが『そう』だって可能性に。」

 そこらへんは僕と同じって事か。

「それで、こっちのあんたは結構マシよね、とか思ってたんだから笑えるわよね?」

 そこで同意を求められてもさ。

「アンタは『アンタ』だったってのに。」

 つぶやくように言う。

「それで?」

「何で黙ってたのか聞きたいのよ。アンタはアタシよりも前から気付いてたんでしょ?」

 今さら嘘ついたりごまかしても仕方ないよな。

 そもそも全部話すつもりだったんだし。

「居心地が良かったんだよ。」

「・・・どういう意味よ?」

「アスカと普通に話せてさ。それなりにかまってもらったり、相談したり。そう言うのが楽しくて。」

「・・・・・・」

「だから、それを壊したくなかったんだ。僕が『僕』だって知ったら、昔に戻ってしまいそうだったから。」

 もうアスカに嫌われたりしたくなかったから。

「結局、逃げてたんだ、ずっと。」

 隠したままで。

 適当に流れに任せていればいいのかもって思いかけてた。

「でもさ、それじゃだめなんだよね。今回の戦いでよく分かったんだ。嫌な思いをしたくないんならきちんと向かい合ってかなきゃ駄目なんだって。」

 アスカの事も、これから先の事も。

 それはそれでつらい事になるのかもしれないけれど。

 それでも。

「だから、アスカには全部話して、それで力を貸してもらおうって思ってた。・・・今さらだけどね。」

 言い訳じみてるなとは自分でも思うし。

 僕がそう言い終わると。

「ふぅん?やっぱり少しはマシになってたみたいね?」

 って軽くアスカが微笑んで。

 僕はその態度に戸惑って。

「・・・アスカ?」

「何よ。」

「怒ってないの?」

「最初はね。けど、よく考えたらアタシも同じだったのよね。」

「どういうこと?」

「鈴原のことよ。参号機が使徒に乗っ取られるって知ってたのに、何もしなかった。下手なことを言って不審に思われたくなかったって理由でね。」

 そこで自嘲気味に笑う。

「自分の力で使徒を止められるって思ってたのよ。でも、結果はあのとおり。アンタが初号機を止めてなかったら・・・」

「・・・」

「だからそのことに関して文句を言える筋合いじゃないのよ、アタシは。」

 それはそれで、少しは気が楽になる話だけれど。

「けどさ、その、昔の・・・ことは?」

「ああ・・・」

 アスカは少し表情を曇らせて。

「アレに関してもどうこう言うつもりは無いわ。」

「けどさ・・・」

 言いかけた僕をさえぎるようにして。

「結局お互い様だったって事なのよね。全部アンタのせいにしちゃってたけど、あの頃のアタシが子供だったっていうのも今なら分かるし。」

「アスカは・・・すごいよね。」

「な、なによ、いきなり。」

「僕は何も変わってないのにさ。」

 アスカはひどく大人になってる気がする。

「そうでもないわよ。」

「アスカ?」

「昔のアンタにはさっきみたいなことは言えなかったでしょ?」

「そう・・・かな?」

「それに、正直な話、これから先一人でやってくのはきついって分かったし。」

 そう言って右手を差し出してくる。

「だからこっちから頼みたいくらいなのよ、力を貸して欲しいって。」

「・・・僕なんかでいいわけ?」

 思わず間のぬけたことを言ってしまったような気もするんだけれど。

「今のアンタなら、ね。」

 そう言って、にやって笑ったアスカに。

 僕はそれ以上何も言えなくて。

 ただアスカの手をとることしかできなかった。

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