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第62話

 とりあえず帰還命令に従ったものの。

 暇なんだよね。

 ミサトさんやリツコさんは使徒の能力の調査だとか。

 倒すための作戦の検討だとか。

 そういうことでひどく忙しそうにしてるけれど。

 僕はひたすら待機状態なわけで。

 もっとも、僕に何ができるわけでもないんだけどさ。

 科学的な事なんて何も知らないし。

 作戦を思いつけるようなひらめきも無い。

 前の世界での知識っていうのも大して役に立たないし。

 だから、ただ最悪の場合を考えて覚悟を決めるくらいしかないわけで。

 その点、ミサトさんたちと一緒に忙しそうにしてるアスカとは大違いだよなぁ。

 大学も出てるわけだし、それ以外に何かと勉強してたみたいなんだよな。

 だからリツコさんとかの話にもついていけてるみたいで。

 そのまま作戦の立案にも参加してるらしい。

 それまでもいろいろリツコさんとかと話し合ってたのがきいてるんだろうな。

 そう考えるといかに僕が今までだらだらしてたかっていうのがよく分かるわけで。

 やろうと思えば、エヴァのことについてある程度知識を持つ事だって無理じゃなかったんだろうって。

 無駄な時間を過ごしてたものだよな。

 そんなことを考えてる自分に苦笑する。

 変に前向きな自分に。



「使徒のATフィールドを中和・・・ですか?」

「そう、今回の使徒は虚数空間を内向きのATフィールドで支えていると思われるわ。それで、あの球体はその影みたいなもの。」

「そして、あの使徒のコアはその内部にあるみたいなのよ。」

「いくら使徒といっても虚数空間内で無事に済むわけも無いわ。」

「ATフィールドで防御してるはずよ。だからそれを中和してやれば・・・」

「勝手に自滅してくれるってわけよ。」

 そんな風にリツコさんとミサトさんが交互に説明してくれたんだけど。

 今ひとつイメージがつかめない。

「それで、僕は何をすればいいんですか?」

 結局、それだけ分かればいいや、と割り切って。

「さっき言ったとおりよ。ただ使徒のATフィールドを中和しさえすればいいわ。」

「でも、コアはその何とかいう空間の中なんでしょう?」

 そんなのを中和できるのかって。

「空間に断絶があれば使徒がここに存在することすらないわ。」

 そう言われても分からないんだけど。

 中和に問題は無いって事なんだろう、多分。

 なら、それでいい。

 それ以上のことを知ったって意味が無いから。



 使徒を遠巻きにするような位置で待機して。

 といってもだいぶ距離があるんだよな。

 ディラックの海を展開したときの最大直径は600メートルを越えてるとか・・・

 今はそれに巻き込まれないような場所にいるわけなんだけれど。

 この距離ってさすがに中和範囲外なんだよな。

 だから、これから接近しなきゃいけないってことで。

 つまりは飲み込まれるリスクを犯さなきゃいけないわけで。

 最初に思ったほどには単純な話でもなかったんだけれど。

 まぁ、やることは変わらないんだよな。

 飲み込まれたらそのときの話だし。

 ・・・いや、飲み込まれたいわけじゃないけどさ。

 それにアスカを飲み込ませたいとも思わないし。

 これで上手くいって欲しいんだけれど・・・

「作戦を開始して。」

 ミサトさんが号令する。

「じゃ、行くわよ、サード。」

「わかった。」

 今回は強さよりバランスが重要って事で。

 同じ距離からフィールドを張ることになってる。

 できれば3人いた方がバランスは取りやすいらしいんだけど。

 まぁ、仕方ないので。

 タイミングを合わせて、挟み込むように近づいていく。

 けれど。

 中和可能範囲内に入るか入らないかってとこで。

「使徒がっ。」

 地面の影が猛烈な勢いで広がっていく。

 このスピードじゃ・・・逃げ切れない。

 だったら・・・

「フィールド、全開っ!サードも急いでっ。」

 アスカも考えることは一緒か。

 使徒を倒すよりほかないって事だよね。

 ただしこっちは全開じゃない。

 アスカにあわせるくらいの強さで・・・っていっても実はよく分かってない上に。

 中和できてるかどうかも分からない。

 なんか手ごたえの無いままに。

 初号機はゆっくりと沈んでいく。

 一方で、アスカは必死にフィールドを張ってる。

 だけど状況は変わらない。

 これじゃ前と同じじゃないか。

 いや、アスカが一緒な分だけ前よりひどい。

 ・・・こう、なったら。

「フィールドっ、全開っ!!」

 思い切り強固な壁をイメージする。

 何よりも強い結界を。

 その瞬間にすべての音が消える。

 前にもあった感覚。

 何もかもがはっきり見える気がする。

 そして、ATフィールドさえも。

 周囲にぼんやりとした感触と。

 二つの異物感。

 でも、分かる。

 ひとつはアスカだ。

 だから・・・もうひとつは、使徒。

 それさえ分かれば。

 イメージを叩きつける。

 使徒を押し包むように。

 つぶすように。

 ・・・そして。

 気付いたときには影も、球体も、消え去っていた。

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