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第44話

 にしても。

 最近ずいぶん実験が多くなったよなぁって。

 今度は、機体交換実験らしい。

 僕が零号機に、綾波が初号機に乗る。

 アスカが参加しない理由っていうのは機体の性質の差とかなんだか。

 一応説明されたんだけど専門用語ばっかりでよくわからなかった。

 まぁ、それはいいんだけどさ。

 わかったところでどうってものでもないし。

 問題は実験がどうなるのかってことだから。

 確か前にこの実験やったときは暴走して、意識不明になったんだよなぁ・・・

 お世辞にも気持ちよかったとは言えない体験だったし。

 できることならやりたくないだけど。

 かといってはっきりした理由もなしにそんなことができるわけもないし。

 仕方ないんだよなぁ。



 けど。

 この実験って何のためのものなんだろう。

 僕が零号機に乗れたからってなんか意味があるわけでもないし。

 零号機ってほんとに試作型だから性能自体はかなり低いって聞いたこともあるし。

 実際、前の世界でもこの実験のあと零号機に乗ったことはないんだよね。

 もっとも、また暴走されちゃかなわないっていうのもあったのかもしれないんだけど。

 だとすると。

 綾波が初号機に乗れるかどうっかって言うことのテストなのかな?

 たしか、ダミープラグって綾波をベースに作ってたんじゃなかったっけか・・・

 どうもこのあたりの知識ってあいまいなんだよな。

 誰かに聞いた気もするんだけど。

 聞いたはずもないような気もする。

 じゃあ何で知ってるんだろうって話になるけれど。

 はっきり説明もできない。

 そもそも、前の世界の終わりのころの記憶自体がぼやけてるから。

 大筋は覚えてるんだけど、細かいこととかは全然だし。

 まぁ記憶に残しておきたいような内容でもないってのは確かだけどさ。

 楽しいことなんて何もなかったしね。



 で。

 実際に零号機にシンクロしてみると。

 包まれるような突き放されるような。

 そんな矛盾した、微妙な感覚。

 やっぱり初号機とは違うんだよね。

 初号機はもっと包まれる感覚が強い。

 それにゆだねられらば高いシンクロ率が得られるってことなんだけど。

 零号機はなんか距離を置かれてる気がする。

 でもそれは拒絶されてるっていうのとは少し違って。

 綾波がそばにいるような気持ち。

 だから「綾波の匂いがする」なんだろうな。

 言っても変態呼ばわりされるだけだから。

 調子を聞かれたときは適当にごまかしたけど。

 そのまま実験が進んで。

 その途端。

 何かが入ってくる。

 前にも感じた感触。

 綾波に似た、でも綾波じゃない。

 もっと無機質なそれでいて生々しい何か。

 気持ち悪い。

 心が、こわれそうな。

 自分が自分でなくなるような。

 僕の意識が拡散していく。

 何も考えられなくなる。



 何だろう、この感じ。

 僕の中と外が混ざり合ってるような。

 ひどく自分が薄くなってる。

 そして、そこに何かがいた。

 ・・・綾波?

 なぜかそう思う。

 でもすぐに、違うってわかる。

 だから嫌だった。

 そこにいてほしくない。

 存在が許せない。

「・・・どうして?」

 かすかに伝わってくる悲しさ。

 なんかひどく綾波らしくて。

 でもそれは綾波じゃないから。

 余計にたえられない。

「消えてよ。」

 めざわりなんだ。

「綾波は死んだんだ。」

 もうどこにもいない。

「だからいなくなってよ。思い出しちゃうんだよ!」

 何もなければ忘れられるから。

 ただ綾波を思い出させるだけなら。

 いてくれないほうがいいんだ。

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