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第40話

 ぼーっとしてたんだろうな、とは思う。

 まぁ、街中歩いてて人にぶつかりそうになる、なんてこと自体は珍しくはないと思うんだけど。

 それが知り合いだったりするのはめったにないし。

 ましてそれがアスカだったりすると、なんでもっとまわりを見てなかったんだろうとか思いたくもなる。

 アスカのことはなるたけ避けようと思った矢先だっていうのにさ。

 この状況じゃ話をしないわけにはいかないじゃないか・・・



「あ、ごめん・・・ちょっと考え事してて・・・」

 そう言いながらアスカのほうをうかがうと。

 アスカのほうも制服を着てて。

 で、連れがいるみたいだった。

 と言っても僕の知ってる人ではなくて。

 うちの中学の、多分一年上の男子生徒だ。

 アスカを取り巻いてる連中の一人なんだろうな。

 一応ハンサム、なのかな?

 まぁ、そんなのはどうでもいいんだけど。

 それよりもその顔に浮かべてる表情の方が問題で。

 ようは僕のことを睨んでるんだけど。

 なんで本当にぶつかったわけでもないのにこんなきつい視線を向けられなきゃいけないんだか・・・

「・・・なんだ、サードじゃない。」

 アスカの方は特に気にしてるわけじゃなさそうで。

「べつにいいわよ、アタシもよそ見してたんだし。」

 って妙に友好的だし・・・

「にしても、アンタひとりなわけ?」

「そうだけど?」

「珍しいこともあったもんね。あんたがファーストと一緒にいないなんて。」

 まぁ、そういう風に思われてるんだろうなぁ。

 実際、否定もできないし。

 授業中とかを除けば、一緒にいない時間のほうが短いだろうって気はするから。

 にしても。

 思ったより口調にとげがないというか。

 前のアスカは綾波がからむとたいてい機嫌が悪くなってたものだったけど。

 そこらへんも変わったってことなのかな。

 それはそれとして、聞かれたことには答えとかないと。

「綾波は実験なんだってさ。」

「ふぅん。」

 たいして興味のなさそうな返事。

 仲いいってワケでもないんだからそれも当然か。



 けど。

 今もそうなんだけど、最近アスカはよく話しかけてくる。

 わざわざ僕のところに話しに来るって事はないんだけど。

 でも、こうやって道であったりすると挨拶してくるし。

 遠回りに無視することもなくなってる。

 ちょっと前まではそれを結構嬉しく思ってたりもしつつ。

 アスカの態度が変わった理由を不思議に思ってたんだけど。

 今は状況が変わってる。

 アスカが以前の記憶を持ってる可能性。

 それがある限り、距離を置いておいた方がいいとは思う。

 とは言っても。

 アスカから話しかけてきた場合、無視したりってワケにもいかないし。

 それで険悪な状態になるんじゃ本末転倒だから。

 だから、てきとうに話を流してくのが良いんだろうけど。

 そういうのがうまくできる自信もないんだよね。

 取りあえず、それからニ、三言話して。

「それじゃ・・・」

 って言ったんだけど。

「・・・なんかアンタ、アタシのこと避けてない?」

 ちょっと目を細めながらそんなことを聞いてきて。

 いや、そうなんだけどさ。

「・・・いや、さ。」

 軽くアスカの連れのほうに視線を向けて。

 それで、ごまかしをいれる。

 彼の方はアスカが自分のことをほっといて僕と話してるんでかなりいらついてるみたいだった。

「・・・あぁ。」

 アスカもそっちに目を向けて、少し嫌そうにつぶやいた。

 ・・・あれ?

 そもそもなんで、アスカはいろんな相手とデートしたり、つきあったりしてるんだ?

 同じ年頃の相手なんて眼中なかったはずじゃなかったっけ?

 前は、微妙に性格が変わってるのかとか勝手に思って深くは考えずにいたけど。

 変だって言えば変だよな。

 今だって彼のことはどうでもいいみたいな感じだし。

 にしてもこの場をお開きにする口実くらいにはなってもらえるだろう。

「邪魔して変に恨まれるのもね。」

 そう言って軽く肩をすくめる。

 アスカは一応納得してくれたようで。

 それで、別れることができて。

 なんとかうまく行ったって、ほっとした気分と。

 結局、僕には分からないことがどんどん増えていくんだよなって。

 結構沈んだ気分とが、不思議に混ざりあったりしてた。

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