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第36話

 ミサトさんが席を外した後。

「サード。」

 しばらくしてアスカがポツリと口を開いた。

「なに?」

「アンタ、この状況でもまだエヴァに乗るわけ?」

 ・・・なにをいまさら。

「当たり前だろ。」

「なりゆきとかで・・・ここまでやるっての?」

 本気で疑問に思っているような口調。

「それは惣流さんも似たようなものじゃないか。」

「アタシには、エヴァに乗ることに、使徒を倒すことに意味があるわ。でもアンタにはそういうのが何もない。」

 まぁ、そうだね。

 エヴァを操縦してたって楽しくも何ともない。

 それは前のときも似たようなものだったけど。

 少なくとも前は父さんに誉められたいとか。

 みんなに優しくして欲しいとか。

 そんなことを期待してたっけ。

「前に聞いたときはそれなりに納得もしたけど。でも、今度は死にに行くようなもんでしょ?」

 エヴァに乗るってことは、いつ死ぬのか分からないっていうのと同じことだと思うけどね・・・

 たとえどんな使徒が相手でもそれに変わりはないんだ。

「だからってさ。惣流さんや綾波に任せて安全なとこで震えてろって?今更そんなことできるわけないじゃないか。」

 二人が戦ってるって事を知ってしまったら。

 そこからは逃げ出せない。

 逃げることはある意味ひどくカンタンだけれど。

 でもそうするともっとつらいって事がわかるくらいには。

 僕も前の経験から学んでいるから。

 だから、意味がないかもしれないと思いつつもエヴァに乗ってる。

「騎士道精神ってやつ?」

 からかうような、でもひどく真面目な問いかけ。

「違うよ、たぶん。これがなりゆきっていうことだよ。たまたま二人が僕の手の届くところにいたんだ。」

「・・・あぁ、そういうこと。」

 何かに思い当たったような顔で軽くうなずいて。

 それからアスカは今まで僕達の話を黙って聞いていた綾波の方に顔を向けた。

「そういえば、アンタはなんでエヴァに乗ってるわけ?」

 ふと思いついたっていうような感じでだったけど。

 アスカがそういう風に綾波に話しかけるっていうのが結構意外だった。

 もっとも綾波はいつもと変わりなく、静かにこう答えた。

「わたしがエヴァに乗るのは碇君を守るため。・・・ただそれだけ。」

 それを聞いたアスカはひどく疑わしげな目で僕を見つめ。

 僕はせめて「家族だから」って一言を入れてくれればいいのにって思ったりした。



 出撃直前。

 僕は悩んでいた。

 使徒が落ちてくる場所は知ってる。

 だから、そこに行けば受け止められる。

 そのハズだけれど。

 記憶どおりに行ってくれるだろうか。

 もしも違っていたら、どうしようもなくなる。

 それくらいならMAGIの誘導にしたがった方が良いのかもしれない。

 だけど、それにしても完全に信頼できるわけじゃない。

 それならまだしも自分の記憶を信じた方がマシだ。

 だから。

 作戦開始の合図とともに僕は全力で駆け出した。

 記憶してる場所に向かって。

 ミサトさん達があわててるみたいだけれど、気にしてるひまなんてない。

『弐号機も誘導を外れています!』

 え?

 思わずモニターを確認する。

 僕と、同じ方向に向かってる?

 なに考えて・・・

 いや、今はそんな場合じゃない。

 走ることだけに集中して一気にたどり着く。

 同時に。

「フィールド全開!」

 ATフィールドをどうやって張っているのか、実は良くわからない。

 壁を作るようにイメージすると、自然に張れている。

 そういうものだった。

 だから今もそうする。

 なにもかもを締め出すように。

 瞬間、全ての音が消えた。

 ひどく静かで、目の前に迫ってくる使徒がやけにはっきりと見えた。

 けれど何も感じない。

 前のときに感じてた圧力さえも。

 不思議に穏やかな気分。

 なのに体の両側から何かが染み込んでくるような感触。

 気持ち悪い。

 それをはじき出そうとしたけど。

 でも前以上に入りこんでくる。

 ・・・あれ・・・・・・零号機と弐号機?

 僕が一瞬とまどったすきに。

 綾波が僕のフィールドを切り裂いて。

 その隙間からアスカがプログナイフを使徒に突き立てた。

 ほぼ同時に爆発が起こる。

 その爆風さえも僕のフィールドの上を滑っていく。

 そんな光景を。

 僕はただ見ていた。

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