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第30話

「まぁそんなことより・・・」

 そう言って意味ありげに僕の方を見るケンスケ。

 一体なんなんだ?

「お前の方はどうなってるんだ?」

「どうって・・・なにがさ?」

「別にとぼけんでもええやろ?」

 二人してさぁ。

 あそこからどう僕につながるって言うんだ?

「綾波のことだよ、あ・や・な・み。」

「へ?」

「だから綾波とのどーせー生活はどうかっちゅうことや。」

 そんな恥ずかしいことをこんな場所で言うかな。

 思わずあたりを見まわしてしまう。

「なにきょろきょろしとんのや。」

「トウジがいきなりそんな事言うからだろ?」

「そんな大声で言ったわけでもないやろが。」

 だからってさぁ・・・

「そんなことよりも問題はシンジがナニをしてるかって事だろ?」

 眼鏡をくいっと指で押し上げるケンスケ。

 目がすわってるし。

「ナニって・・・何もしてないよ。」

 って言ったけど二人とも信じてないみたいだった。

「なぁシンジ。」

 そう言って肩に手を乗せてくる。

「俺達ぐらいの年齢の健康な男子がだ、そういう状況で何もしてないなんて信じられるわけないだろう?」

「まったくや。」

 そこで腕組んで重々しくうなづかないで欲しいなぁ。

「綾波と一緒の食事。」

「綾波と一緒の風呂。」

「綾波と一緒のベッド。」

 って言いながら顔を近づけて来る二人。

「こんな恵まれたシチュエーションで何もしてないっていうのか、お前は?」

 いやそんな風に力説されてもね。

 それに後の二つはなんなんだ・・・

「だからそういうんじゃないんだよ。」

 僕達が一緒に住んでるっていうのは。

 同棲とか、そういった恋愛めいたものじゃなくて。

 もっと穏やかな。

 前に綾波が言ってた『家族』っていうのが一番近いんだろうけど。

 だいたい僕には・・・って。

 考え込みそうになったので顔を上げると。

「碇君・・・」

「綾波・・・」

 とか言いながら手を取り合い見詰め合ってる二人がいた。



 いったい何やってるんだか。

 どうせ、二人の妄想を実演してるとか、そんなところだろうけど。

 あきれて見てると。

「・・・何をしているの。」

 突然うしろから声がかけられた。

 演技に夢中なトウジは深く考えもせずに。

「お前に正しい同棲生活ゆうのを教えたろ思ってな。」

「・・・同棲ってなに?」

「何言うとんのや・・・って綾波!?」

 そう。

 いつの間にか僕達のそばに綾波が来ていて。

 トウジ達のあやしい行動をじっと見つめていたわけで。

 それに気付いた二人は。

「ま、まあくわしくはシンジにでも聞いとくれ。」

「そうそう、俺ちょっと用事があったんだ。」

 とか言ってそそくさと立ち去ってしまった。

 まぁこの状況で綾波に説明するのがいやなのはわかるけどさ。

 残された僕にどうしろって言うんだよ。

「そういえば、もう訓練終わったの?」

 とりあえず話をそらしてみる。

「ええ・・・・・・碇君、同棲って?」

 やっぱりだめか。

 でも綾波がほかの人に聞いて、変な事教えられるよりはましだよな。

 とか自分をなぐさめて。

「同棲っていうのは、その、好きあってる人同士で一緒に住むことだよ。」

 軽く目をそらし気味にして早口で言いきる。

 そうしたら。

「・・・そう。」

 って、なんか軽く頬を染めてるような・・・

 なんでこんな反応するんだろうとか思いつつ。

 少しだけトウジ達を恨みたいような気がした。

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