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第3話

 病院の前で。

 よく考えたら綾波がらみのだけじゃなくて。

 なんかその他のいやなことばかり思い出してしまった。

 トウジのこととか・・・それに、アスカのことも。

 ホントに、ここではロクなことがなかったような気がする。

 まぁ、病院なんてそんなものなのかもしれないけど。

 で、そんなことを考えてミサトさんに不思議そうな顔をされたりしつつ。

 念のためという割にはずいぶんときちんとした検査を受けて。

 おかげで結構な時間がかかったんだけど。

 それが終わってもまだ住むところに関して決まってないって言うからぶらぶらと時間をつぶしてたんだけど。

 そうしたら、会ってしまった。

 綾波に。



 でも「会った」っていうのは正確じゃないかもしれないな。

 綾波がストレッチャーに乗せられて僕の横を通りすぎたってだけだから。

 一応、顔は僕のほうを向いてたけど、たまたまだろうな。

 今の綾波が僕に気を止めるわけもないし。

 この綾波は僕の知ってる綾波じゃないんだから。

 けど、僕の目はなぜかずっと綾波のことを追っていた。

 自分でもわからないけど、目が離せなかったんだ。

 そのせいで、父さんが綾波にやさしげに声をかけてるところまで見る羽目になったけど。

 そんな光景には不思議なほどになにも感じなかった。

 前のときはうらやましいようなやるせないようなそんな気がしたのにな。

 けど、父さんのことは本当にどうでもいいことになってしまっていたから。

 ・・・違うな。

 父さんのことだけじゃない。

 ほかのこともみんなどうでもいい。

 僕にとっての全てはあの時に終わってるんだし。

 この世界で何かを望むなんて気分にもなれないし。

 今エヴァに乗るのも惰性みたいなものなのかもしれない。

 ほかの選択肢に興味はあるけど、選ぶ気も起きてこない。

 ただそれだけなんだよな。

 なのに。

 なんで綾波にはこんなに心がひかれるんだろう?

 違う、はずなのに。



 その後。

 ようやく手続きが終わったって言うんで、ミサトさんと一緒に係官のところに行ったんだけど。

「ちょっとぉ、個室ってどういうことよ。」

「そう言われましても・・・」

「いくらなんでも一人で・・・」

「しかし・・・」

 と、当事者を無視して二人でやりあってるし。

 ミサトさんが僕のこと思ってくれてるってのは分かるんだけどさ。

 父さんと暮らしたいとは思わないし。

 ミサトさんのところで暮らすっていのもちょっと遠慮したからなぁ。

 一人暮しのほうが都合がいいんだよな。

「で、シンジ君はどうなの?個室でいいの?」

 らちがあかないと見たのか、ミサトさんは僕のほうに話を振ってきた。

「僕はかまいませんけど。」

「ほんとにいいの?」

「家事は一通りできますしね、一人でもそんなに苦労はないですよ。」

 できるかぎり明るく言ってみせる。

「それに、一人暮しっていうのにもあこがれてたんですよ。」

「でもねぇ。申請すればお父さんと住む事だって・・・」

「何年も別々のところで暮らしてたんですし、急に一緒にって言ってもお互いギクシャクするだけでしょうし。」

「まーた、無理しちゃって。親子なんだし・・・」

「関係ないですよ、そんなの。」

 あの頃だって親子だなんて言える間柄じゃなかった。

 父さんが考えてたのは母さんともう一度会うことだけ。

 僕は父さんに振り向いて欲しくて、でも臆病でなにもできなかった。

 それに比べたらミサトさんやアスカのほうがまだしも「家族」だったんだと思う。

 最後には破綻しちゃったし、一緒に暮らしてたときはほとんど考えもしなかったけど。

「ともかく、僕は父さんと暮らす気はありませんよ。」

 だから僕ははっきりとそう言った。

 はっきりと言い過ぎたのかもしれない。

 おかげでミサトさんがすっかり変な誤解をして。

 結局ミサトさんのところに引き取られることになっちゃったんだよなぁ。

 ・・・失敗した。

 こうなったらなんとか理由をつけて住むところを探さないとなぁ。

 これでアスカも一緒に暮らすなんて言うのだけは勘弁して欲しいし。

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